土地選びの前に、知っておきたい法規があります。 2017年 06月 23日
「家づくりは、まず土地探から」という方は多いかもしれませんね。思い通りの家を建てるには、住みたい場所で、希望の間取りが取れるのか?希望の外観の建物が建てられるか?土地の周辺に高層の建物が建たないか?などを予め確かめておく必要があります。その土地にどんな家が建てられるか、周辺にどんな建物が建つか、などは土地や建物にまつわる法規で定められています。土地を購入する前に、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
◆「用途地域」を見れば、周辺環境がわかります
「用途地域」とは、都市計画法に基づき、地域ごとに建物の種類や用途を定める法律です。住宅や商業施設、工場などが秩序なく混在することを防ぐ目的があります。土地を選ぶときに「用途地域」を調べることで、候補の土地が閑静な住宅街にあるのか、繁華街の近くか、工場の近くか、といった周辺環境を把握することができます。
※地域の再開発や区画整理などで「用途地域」が見直されるケースもありますので、市役所や不動産会社などで最新情報を確認してください。
12種類のうち、工業専用地域以外であれば住宅が建てられます。低層住居専用地域は閑静な住宅街ですが、買い物が不便になる可能性も。商業地域や工業地域は住居以外の利便性が優先されますので、どんな商業施設や工場があるのか、実際に現地へ赴いて周辺環境を確認しましょう。
◆その土地に建てられる「家の大きさ」も決められています
それぞれの土地に建てられる「家の大きさ」を定めた数字が「建ぺい率」と「容積率」です。同じ広さの敷地でも、この数字の違いによって「敷地いっぱいに建物が建てられるかどうか」や、「3階建てまたはそれ以上の階数の建物が建てられるかどうか」が変わってきます。「建ぺい率」や「容積率」は先ほど解説した「用途地域」によって決められています。土地を購入する前には「用途地域」と「容積率」を合わせてチェックしておきましょう。
・建ぺい率
建ぺい率は、その土地に対して何%建物が建てられるかを表しています。たとえば100㎡の敷地で、「建ぺい率60%」であれば、60㎡が建物用に使えることになります。建ぺい率が大きいほど、敷地いっぱいに家が建てられます。建ぺい率が小さい土地は、家が小さくなることから敬遠されがちですが、建物以外の部分は車庫や庭として活用できるため、住まいにゆとりが生まれるというメリットもあります。
・容積率
容積率は、その土地に建てられる「延べ床面積」を表し、用途地域や前面道路の広さに応じて制限されています。100㎡の土地で「容積率100%」であれば、延べ床面積100㎡までの家が建てられるということ。容積率は建ぺい率とセットで用いられるため、100㎡の土地が「容積率100%、建ぺい率60%」なら、1階の床面積60㎡、2階の床面積40㎡の2階建ての家が建てられます。「高さ制限」や「斜線制限」によっては、容積率を満たせないケースもあります。
◆外観にこだわりたい方は、「高さ制限」、「斜線制限」にご用心
・北側斜線制限
屋根が一部だけ切り取られたような形の家を見たことはありませんか?その家は、「北側斜線制限」に合わせた屋根形状になっていると考えられます。「北側斜線制限」は、低層住居専用地域と中高層住居専用地域において、北側の隣地の日照などを確保するために定められています。北側の隣地境界線または北側前面道路の反対側の境界線から立ち上げた高さから1:1.25の勾配の斜線を引き、その内側に建物をおさめなければなりません。外観に大きく影響する規制なので、注意が必要です。
・道路斜線制限
敷地が面する道路の幅によって、高さが制限されるのが「道路斜線制限」です。道路の採光や通風を確保するために定められています。道路の反対側の境界線から敷地に向かって引いた一定の傾斜の内側に収まる高さで建物を建てなければいけません。屋根に勾配をつけるなどの方法で「道路斜線制限」に対応できます。
・隣地斜線制限
隣地の日当たりや通風を確保するために設けられているのが「隣地斜線制限」です。隣地境界線を起点とした高さから一定の傾斜の線を引き、その内側に収まるよう建物を建てる必要があります。「隣地斜線制限」は、高さが20mまたは31mを超える部分についての制限であるため、マンションやビルなどの建設を制限する法規となります。
・絶対高さ制限
第1種・第2種低層住居専用地域では、隣地斜線制限は適用されません。その代わり建物の高さを10mまたは12m以内に制限する「絶対高さ制限」が定められています。高さ10~12mは3~4階の建物に相当しますので、一般的な住宅であれば問題なく建てられます。
・天空率
「天空率」は、正射影投影図(魚眼レンズで空を見上げたような図)の中で、建物が見える範囲を除いた空の割合のことを言います。斜線制限に適合した建物より空の割合が大きくなる(天空率が大きい)建物であれば、建築が可能となります。「天空率」を採用することで、不自然な屋根の傾斜などが不要となり、設計の自由度がアップします。
いかがでしたか?すべての法規を理解するのは大変ですが、土地を選ぶ際の注意点として、ぜひ用語だけでも頭に入れておきましょう。より詳しい内容は、不動産会社や設計士など、専門家にしっかり相談してくださいね!